山のお話

2005.3

Reiko

『やまどりのはなし』

 

一年に数回、山道でやまどりに出会います。

尾が長く、大きな鳥で、ももたろうのお供をしたキジによく似ています。

ご先祖は鳳凰(新しい1万円札の裏にいる鳥)かもしれない

と思いたくなるような、りっぱなスタイルです。

 

やまどりに会うと、なにかいいことがあるような気がします。

なんだかすごく明るい未来が待っていてくれているような

ワクワクした気分になります。(ちょっとおおげさですが。)

 

ところが一年ほど前、一週間ぐらい続けて毎日出会ったことがありました。

そうなると「ありがたみ」がだんだん減ってカラスに出会うのと

大差ない気分になりそうで、「これはまずいぞ!なんとかしなければ!!」

と思い、やまどりに「ちょっと出て来すぎじゃないの?」と声をかけました。…

それから一年間やまどりは全く出てきません。

あんなこと言ったからもう会えないのかなと少々悲しくなったとき、

この間久しぶりに出てきてくれたのです。本当にうれしかったです!

そして気が付きました。 やまどりに会うといいことがある…

のではなく、会うこと自体がいいことなんだ !!と。

『おさるのはなし』

 

おさるの群れがうちのまわりに来始めたのは

10年ぐらいまえでした。

さいしょはめずらしく子供たちと見に行ったりしていました。

「あのおさる たちは動物園に帰っていくん?」ときくので

「かえらない。山にずっといるよ。」と答えました。

どこかに帰ってくれたらよかったのでしょうけど

ここがおさるたちの帰る場所らしく、

おさるたちはふえるいっぽうのようです。

けんかをしたり、柿を食べたり

屋根にすわって山をながめながら腰をたたいていたり・・。腰痛??

はしっている私の車にうえからダイビングしてきた

勇気あるのもいます。こわかった〜。

これから10年後はどうなっているでしょう。

ヒトはさらに減りサルはさらにふえて、

わたしたちのほうがおりのなかで

暮らしているかもしれません!

おかあさんざるがこざるをつれて見に来るかな?

2005.4

『のうさぎのはなし』

 

ある昼下がり山道をゆっくり車で下っていると、

横の茂みから、野うさぎが一匹ぴょんと出てきました。

グレーの毛で耳がピンと立ってピーターラビットそっくりです。

突然現れた車にびっくりしたのでしょう。

車に背を向けてピョンピョン逃げていきます。

すぐまた横の草やぶに帰ればいいのにひたすら車の前をまっすぐ跳ねていきます。

追いかける気はないのですがどうも誤解されているようです。

うさぎ君、どこまでがんばるつもりかな?

と、ちょっとおもしろくなってうしろをついていくうち

少し心配になってきました。

うさぎ君の心臓、だいじょうぶかな・・・

もう100メートルぐらい走り続けているのです。

でも少し先でもっと心配になりました。

すぐそこのカーブはとても見通しが悪いのです。

うさぎ君対向車にぶつからないかな?

でも対向車はせいぜい一日数台ぐらい、

確率はゼロに近いと思ったときカーブミラーに何かが映りました。

くるま?!じゃなくて赤いバイクです。

うさぎ君はちょうどカーブの真ん中です。

しまった!と思った瞬間、初めてうさぎ君は止まりました。

幸いバイクも止まり私も止まりました。

はさみうちになったうさぎ君は一瞬困った顔で私を見ましたが、

そこでやっと横の草の中へ消えました。

よかった・・バイクの郵便屋さんも私も笑ってすれちがいました。

山道の運転もけっこう気を使います。

                      2005.6

『のうさぎのはなし その2』

 

神山に来て最初の春、近所のおばさんが

野うさぎのあかちゃんをくれました。

畑の横でじっとしていたそうです。

こげ茶色の毛で目はまっ黒です。

片手にすっぽり入るほど小さくても、

ちゃんと長い耳をしています。

初めて野うさぎを見ましたが、とにかくかわいい!!

うれしくてさっそく「ぴょん吉」と名前をつけ、

それから2,3日牛乳を水でうすめて飲ませたり

、箱から出して部屋のなかでぴょんぴょん遊ばせたり、

だいぶん元気になったとよろこんでいたら、

5日目に急に死んでしまいました。

ショックで涙が止まりません。

でも松の根元にお墓を作り土をかぶせて立ち上がり

、何気なくうしろを見るとまっ黒い長〜いへび !!がそこにいます。

これまた神山に来て初めて見るものですが、

とにかくこれだけは大嫌い!見たくない!!

一瞬ぴょん吉のことは忘れてしまい、うちのなかに逃げ込みました。

涙も止まって乾いています。

ぴょん吉君が松の下でおもしろがっているような気がして、

笑ってしまいました。

 

その夜、夢をみました。

ぴょん吉が元気にあたりを跳ねまわっています。

うれしくて楽しくてしかたない、といった風です。

あたたかく明るい日差しです。

私もうれしくてながめていましたが、

やがて遠くのほうへとんでいって、

すがたが見えなくなりました。

目が覚めたとき、「ああよかった」と思いました。

最後まで何となくユーモラスな野うさぎでした。




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